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彼の視線が私の次に彼女をとらえる。
「……お疲れ様です」
一瞬出遅れたその言葉は、きっと私と同時に彼女にも向けられていた。
いや、本来なら彼女だけに向けられたものだったのかもしれない。
けれど、彼の視線は私にだけ向けられていた。
きっと…
彼女のことを見られないのだろう。
…私の出番というわけだ。
「どうしたの? こんな時間に」
「あ、はい…。急で申し訳ないんですけど、今日、定時後やろうと思って…」
「あ、やる気になったな、実行委員長。やる気になってもらわないと困るけど」
「やる気はあったんですけど、時間がなかったんですよ。……今までは」
「そうだったね。お疲れさま。そうだ、室井先輩もお疲れさまでした」
私は彼女に話を振った。
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