お目付け役

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……え。 彼女の声は潜めていたにもかかわらず私の耳には十分に届いた。 もしかしたら… わざと私の耳に入れたのかもしれない。 私は顔を上げることが出来ずに、視線は先程よりもさらに激しくノートの上を行ったり来たりしていた。 私は……ほったらかしになんかしていない。 彼らの話は極力黙って見守り、聞かれた時にだけ私に出来る範囲でアドバイスをしようと決めていただけだ。 これはあくまでも新入社員の企画なのだから。 毎年のお目付け役もこうしてきたはずだ。 それに、実際に前田さん以外の委員はことある毎に、去年まではこういう点はどうしていたのか、こういう場合はどうしたらいいのかと私にアドバイスを求めてきた。 ただ、彼女……前田さんだけは まるで、私を避けるように私には一言も声を掛けてこなかったのだ。 私を邪魔者扱いしていると言っても決して大袈裟ではない。 私への彼女の態度はあからさまで、他の委員が私に気を遣ってくれるほどだった。
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