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一見、落ち着いているように装っているつもりでも、心の中はどうにもアンバランスな私は話題の選択に少し困る。
「…今日、室井さん見た?…って、見たよね。会ったよね」
「はい。…会いましたよ」
「いつもと雰囲気違って、びっくりした。越石くんもビックリしたでしょ?」
「ええ。まあ…はい」
越石くんが頭の中で彼女の姿を鮮明に想い描く。
そして、次の瞬間にはその幻の彼女に少し照れている。
「…キレイだったよね」
明るい話題にしたつもりなのに、わずかに声のトーンが低くなる。
それを慌てて、必死に隠す。
「今日の彼女見て、また惚れちゃった男子は少なくないわね、きっと」
「森田部長がセクハラ発言連発してましたよ」
「うわ。言いそう」
「俺はいつもの彼女の方がいいな…」
その言葉に視線がゆっくり下がる。
それはやっぱり…
私にとっては、聞きたくない言葉なのだ。
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