もう一人の年下

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「ううん、そこの棚だから」 私が視線で棚を示すと、吉野くんはイスから立ち上がって言った。 「高遠さん、あの上の段、届くんですか?」 「…イスに乗るから…いいの」 「ホントにかわいいな。だったら手伝ってって、言えばいいじゃないですか」 吉野くんはそう言って、隣のデスクの分厚いファイルを何冊か重ねて持ち上げた。 仕方がないので私も残りのファイルを手にして吉野くんの後に続いた。 「それとこれは上の段」 私と吉野くんの間でファイルが行き来する。 上の段にファイルを仕舞う吉野くんを見上げて…その隣に越石くんの身長を並べる。 越石くんより…少し低いのかな。 私はほんの少しの間、ボーっとしてしまったらしい。 「…高遠さん?」 「…え?」 「何ボーっとしてんすか?」 「え、あ、私ボーっとしてた?」 「はい。すごく。何考えてたんですか?」 「…何も…」 「越石のこと?」 「…え?」
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