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「室井さんこそお疲れさまです。まだ…なんですか?」
「うん。もう少し。これから社長室に行くの。じゃあ、ごめんね」
彼女は書類を手にして足早に事務所を出て行った。
私は彼女の背中から視線を手元のファイルに移して、次にその視線を吉野くんに向けた。
「…キレイだよね。吉野くんもやっぱり憧れる?」
吉野くんは鼻から小さく息をもらした。
「…確かにキレイですけど、別に憧れはしませんよ」
「あんなにキレイなのに?」
私は変に食いついてしまった。
だって、彼女になびかない男の人がいるなんて信じられなかった。
すると、吉野くんは呆れたようにため息をついた。
「そんなの人それぞれですよ。俺はああいうのはタイプじゃない」
「え、そうなの?キレイな上に、性格もすっごくいいよ?」
「高遠さん、俺に室井さんを売り込んでるんですか?俺はタイプじゃないですし、俺のタイプは…」
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