もう一人の年下

4/19
前へ
/19ページ
次へ
そう言った吉野くんの顔は少しだけ真顔で、私の目をまっすぐに見つめていた。 私は驚きながら少し戸惑った。 吉野くんの視線は彼の言うとおりになんだか強引だった。 年下の…男の子という感じもしなかった。 「…気に障(サワ)ったならごめんね。ね、ここは一人何個の計算?」 私は手元の資料に視線を落とし、やっと彼の視線から解放された。 すると、私を見下ろす吉野くんがため息をつきながら言った。 「…気には障ってませんけど、他の女(ヒト)ならともかく、高遠さんに年下扱いされたくないです」 その言葉に、私は資料の文字を追いかける視線を止めて、吉野くんよりも大きなため息で返事をした。 「…ごめんね。私みたいなのに子供扱いされたくないよね。…子供扱いなんてしてるつもり…なかったんだけど」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

236人が本棚に入れています
本棚に追加