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美容室『くろうど』
カメオの差し入れをガツガツと食べつつ、
「お前よ。そのTシャツに、その上っ張りはないんじゃねぇ?センスねえなぁ」
蔵人はズケズケと言った。
「……」
カメオはちょっとムッとする。
確かにカメオのファッション・センスはどうかしている。
今日は紫とオレンジのボーダーTシャツ。
黄緑のチェックの綿シャツだ。
洗濯して乾いていたから選んだだけのコーディネイトだった。
「蔵人さんのせいっすよ~。…バイト代で夏物買う予定だったのに」
「ヒトのせいにすんなよ…ってか、俺。もう、お前に貰った金、残ってねぇしよ」
「……?」
(え…。貰った?たしか『ちょっと貸せよ』って言ったはずなのに…?)
カメオは耳を疑った。
「なんか欲しいのあったら持ってっていいぜ」
おでんのハンペンを刺した割り箸で蔵人が店の奥の部屋を指す。
開いたドアから八箱ほどの山積みのダンボール箱が見える。
「……」
カメオは無言でダンボール箱を見つめた。
「サオリのマンションに置いてあった俺の荷物。便利屋が先月から預かってたって、さっき届けてきてよ」
「はあ…」
開けたダンボール箱の周りに服が散らかっている。
アメカジ系の古着ばかりだ。
貰ってもカメオが着るには躊躇するようなチンピラ風の服ばかりである。
大体、背丈が一八五センチある蔵人の服など、小柄(一六五センチに届かず)なカメオにはサイズも合わない。
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