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「……」
蔵人は悔しさに握り締めた拳を震わせた。
今の落ちぶれた姿を誰よりも後輩の恭平に見られたくなかったのか。
「~~っ」
ややキレる寸前の様子。
それを察して、
「お、俺。もうバイトに…」
カメオもそそくさと店を出た。
「『じゃ』って何だよ。ってか、何しに来たんだよっ」
二人が出て行くと蔵人は腹立ち紛れにワゴンを足で蹴った。
ガッシャーン!
ガラガラ…。
パーマ用のロットが落ちて床に散乱した。
「……」
カメオが美容室を出ると歩道でケータイで話している恭平の姿があった。
傍らには赤いポルシェが停まっている。
「じゃ…」
電話を切ると、恭平はケータイで美容室の外観を撮影し始める。
カシャ。カシャ。
「あの、何してるんすか…?」
カメオは訝って声を掛けた。
「さっき言ったろ?支店を出すって。それが…ここだよ…」
顎をしゃくって恭平は美容室『くろうど』を指した。
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