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「……?」
ふと、美容室の店内の蔵人が窓の外を見た。
歩道にカメオと恭平が話している姿がある。
「…なんだ?アイツ等」
窓から顔を出すと恭平の話す声が聞こえた。
「『リッチ』時代には色々と思い出あるし…。俺、そん時の仲間が困ってるの放って置けなくてさ…。当時は憧れの先輩だった訳だし。…トップスタイリストの腕をここの支店で振るって欲しいって思ってるんだ…」
「じゃ、ここを支店にしたら…店長に…?」
カメオは恭平に訊ねた。
「そう…」
恭平は笑顔でうなずく。
「……」
美容室の窓辺で聞き耳を立てていた蔵人の眼にいつしか感激の色が滲んでいた。
五.アヤ
数日後。
美容室『くろうど』
カラン。カラン。
カメオが居酒屋の開店前に差し入れを持ってやってくる。
「蔵人さ~ん。今日も出来立てアツアツのおでんっすよ~」
シュッ。シュッ。
店内で蔵人がシザーを磨いている。
知り合って以来カメオがシザーを手にしている蔵人を見るのは初めてのことだ。
「悪いな。カメ。そうだ。礼に髪切ってやろうか?…腕慣らしによ」
言いながらシザーをシャキシャキとする。
「……」
どういう心境の変化か?
カメオはキョトンとした。
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