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カラン。カラン。
「蔵人。久しぶりっ」
突然、カメオの背後からスレンダーな女が美容室に入ってきた。
スラリと背が高くモデルのようなプロポーションをしている。
「やだっ。ヤニ臭い。あんた、いつから煙草なんて?美容師が煙草吸うなんて信じらんないわねっ」
入るなり顔をしかめ、手でパタパタと扇ぐ。
キツイ口調どおりに勝気そうな眼元のキリッとした美人だ。
「…アヤ?なんで、ここに…?」
蔵人が『リッチ』にいた頃の同僚の美容師、高橋アヤである。
「……」
予期せぬアヤの来訪に蔵人は眉をひそめた。
「あら?恭平に聞いてない?わたし、ここ支店にしたら店長を任せて貰うことになったの」
カッシャーーーーーン…。
蔵人の右手からシザーがこぼれ落ちた。
恭平の憧れの先輩=俺。
という勘違いに蔵人は気付いた。
「……」
床に落ちた足元のシザーを見つめる。
一瞬、虚しい表情になるが、
「……」
すぐに蔵人は、片頬で苦笑した。
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