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美容室『くろうど』の薄暗い店内。
「……」
蔵人は床に大の字に仰向けになっていた。
バルコニー側の大きな窓は開け放して、西陽が強く射し込んでいる。
天井の梁で風で小刻みに廻る天井扇を蔵人は見つめていた。
「……」
菱形の木製の格子に硝子のはまったドア。
真鍮製のドアベル。
深緑の革張りの長椅子。
チェストの上の古いラヂオ。
骨董のランプ。
蔵人は順々に眼で追った。
どれもサオリと二人で骨董店巡りをしながら揃えた品だった。
ランプの色はグリーンとオレンジのどちらにしようか悩んだあげく、サオリがオレンジに決めた。
夕陽に映えるランプを見て、
『ね。オレンジにして正解だったね』
満足げに微笑んだサオリの顔が思い浮かぶ。
「……」
蔵人は虚ろにランプを見つめた。
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