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カメオが病院の廊下をトボトボと歩いていくと、
「カメオ君」
五十代のベテラン・ナースの佐々木がカメオに声を掛けてきた。
カメオがナース・ステーションの中に入ると佐々木が冷蔵庫からプリンを出して渡してくれる。
「小学生の頃は、しょっちゅう病院、来てたのにね~」
「う、うん…」
プリンを食べながら懐かしげにカメオは室内を見渡した。
「…憶えてる?カメオ君、わたしに『大きくなったら看護婦さんになる』って言ってたの。ふふふ…」
佐々木は目尻の下がったオタフクのような笑顔をカメオに向けた。
「…その頃は看護師なんて知らなかったから…」
カメオは照れ臭そうにプリンを食べた。
「お姉ちゃんは『お医者さんになる』って言ったのにカメオ君は『看護婦さんがいいっ』って言ったのよ。…嬉しかったな」
佐々木は感慨深げに眼を細めた。
「……」
カメオは意外そうな顔をした。
「…うちは家族、皆、医者なのに、俺は次男だから病院以外の仕事に進めばいいって、ずっと言われてて…、『病院以外、病院以外』って…、ずっと思ってた…」
独り言のように言いながら、
「……」
カメオは忙しく行き来するナース達をまじまじと見つめた。
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