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その翌日。
大部屋の病室。
カメオが行くともうベッドに、蔵人の姿は無かった。
空のユニクロの袋がベッドの横に置いてある。
「…いなくなった?」
カメオは隣のベッドの中年患者に訊き返した。
「あ~。気が付かない間に出て行っちゃったみたいだね~」
中年患者は隣の空いたベッドにチラリと眼をやる。
「……」
カメオは病室の窓から空を見つめ、やりきれない表情になった。
その頃。
女子校の並びの公園。
スケッチ少女、もえがベンチに座っていた。
「……」
真剣な面持ちで美術冊子を開いて見ている。
ページには【学生絵画コンクール受賞作発表】と見出しにある。
最優秀作、入選、佳作、と順に眼で追う。
紙面の下のほうに眼を留め、
「……」
表情が固まる。
【山本もえ】
選外の自分の名前を見て、冊子をバサッと乱暴に閉じ横へ放り投げた。
ペタリ。ペタリ。
「カメ~。ホンット、ボンヤリだな。アイツ…」
蔵人はブツクサと言いながら、ペタリペタリと坂道を下っている。
カメオの買ってきた服を着ているが足元は病院のスリッパである。
カメオは靴を買うことまでは気が付かなかったのだ。
見舞いの全財産五万円の包みをポケットにねじ込む。
「……」
横断歩道に立ち、蔵人は公園に眼をやった。
ベンチのスケッチ少女に気付く。
「ふ~~ん…」
蔵人は何か思い付いたように、公園に向かって歩き出した。
一方。
病院を出たカメオは居酒屋のバイトに向かう。
「……」
坂の上から海岸の方を見る。
数人のサーファーの姿。
蔵人がいる訳もない。
トボトボと横断歩道まで来る。
「……」
公園の正面口にスケッチ少女が立っている。
カメオの姿を認めると近づいてきた。
「……?」
カメオはキョトンとして少女を見る。
「……」
少女はおみくじのように結んだ大きな紙を黙って差し出した。
「…え?…蔵人さん?」
結び文には、
【カメへ くろうど】
とミミズの這ったような汚い字で書いてある。
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