6人が本棚に入れています
本棚に追加
「サオリさんって、三十過ぎよりは若く見えるわね」
千鶴子はカメオにカステラを一切れ、手渡す。
「あ~。二十五…くらいに見えるよね」
カメオはパクリッとカステラに噛り付く。
「……」
にわかに千鶴子は不快な表情になった。
「……」
気が付かずにカメオは暢気そうにモグモグとする。
「そ~お?よく見ると眼元、『カラスの足跡』あったし」
皮肉っぽく言って、千鶴子もカステラに噛り付く。
「…そーいや。姉ちゃんって、すんごい肌キレイだよね」
カメオは千鶴子の横顔をジイッと見た。
「…肌はね」
千鶴子は眼鏡をクイッと持ち上げる。
角ばった輪郭。小さな眼。存在感の無い鼻。への字に結んだ口元。
およそ華やかさの無い平板な顔立ちだ。
でも色白の肌だけはキメ細かくツヤツヤとしている。
ピロリン♪
着メロが鳴り、千鶴子は慌ててケータイに出た。
「はい?分かった。すぐ戻る」
ケータイを切ると大口を開けてカステラを口に放り込む。
「病院?」
「うん。カステラ仕舞っといて」
モグモグしながら千鶴子は急ぎ足で居間を出ていった。
「…ん~…」
仕舞うと見せ掛け、カメオはもう一切れカステラを切って食べた。
最初のコメントを投稿しよう!