第2話 狐の嫁入り

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「サオリさんって、三十過ぎよりは若く見えるわね」 千鶴子はカメオにカステラを一切れ、手渡す。 「あ~。二十五…くらいに見えるよね」 カメオはパクリッとカステラに噛り付く。 「……」 にわかに千鶴子は不快な表情になった。 「……」 気が付かずにカメオは暢気そうにモグモグとする。 「そ~お?よく見ると眼元、『カラスの足跡』あったし」 皮肉っぽく言って、千鶴子もカステラに噛り付く。 「…そーいや。姉ちゃんって、すんごい肌キレイだよね」 カメオは千鶴子の横顔をジイッと見た。 「…肌はね」 千鶴子は眼鏡をクイッと持ち上げる。 角ばった輪郭。小さな眼。存在感の無い鼻。への字に結んだ口元。 およそ華やかさの無い平板な顔立ちだ。 でも色白の肌だけはキメ細かくツヤツヤとしている。 ピロリン♪ 着メロが鳴り、千鶴子は慌ててケータイに出た。 「はい?分かった。すぐ戻る」 ケータイを切ると大口を開けてカステラを口に放り込む。 「病院?」 「うん。カステラ仕舞っといて」 モグモグしながら千鶴子は急ぎ足で居間を出ていった。 「…ん~…」 仕舞うと見せ掛け、カメオはもう一切れカステラを切って食べた。
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