我慢くらべ

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私が決意を固めた日、智也が不意に現れて、いたく不満げな面持ちで一言だけ置いていった。 「オレも行く」 その後ろ姿を黙って見送り、私は思った、まぁ分かっていた事だよ、想定内、予想通り、もはや当たり前、お前は必ず私の行く先についてくる。 だからこっちも言ってやった。 「受けて立つ」 もう何十回と繰り返されている智也との戦い、ぶっちゃけただの『我慢くらべ』なのだが、思えばヤツと初めて会った時から、そいつは始まっていたんだ、宿命的に。 今でもよく覚えているよ。 富山のど田舎で産まれ育った私だが、家が裕福だった事もあり不自由無いのは勿論、周りからもチヤホヤされて、学校でもリーダー的存在だった、まぁ全校で30人も生徒のいない小学校だったが、そこに智也が転校してきたのだ、五年生の夏の終わり位だったかな。 なんか頭っからつま先までピッカピカの綺麗な格好をしていた、東京から来たお坊ちゃんと言う事で、みんなの注目の的だった。 スカした、いけ好かんヤツだと思っていたけど、意地悪したり、無視したりなんかはしなかった、ただ意識しないようにしていたのかも。 そんなある日、私は友達と肝試しに行く事にしたんだ、夜こっそり家を抜け出すから、智也は誘わなかった、私達のがさつな親と違い、やはり育ちの良さそうな智也の両親にないしょで家を出る、なんて事、ヤツはしないと思っていたから、でも、アイツは言ってきたのだ。 「オレも行く」 それが、昨今まで続いている私と智也の戦いの始まりだった。
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