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ミカの出生のことで脅されたことがプライドに触ったのか、愛子がこれ見よがしにミカの前で絡んでくる。
ミカの知らない大学時代の話を持ち出しては、しきりに懐かしいだのあの時はああだっただの鬱陶しいことこの上ない。
面倒なので適当に相槌を打ちながら、それでもミカの様子が気になってちらりと見てしまう。
恐らく愛子とどういう関係だったのか、察しているだろう。
けれど恨み言ひとつ言わずに、黙々と自分の仕事をこなす姿がいじらしくて堪らない。
「あら、ごめんなさい。あなたの前でこんな話しても、意味が分からないわよね」
休憩中の雑談でわざとらしく愛子が言うが。
「いえ、知らないゆーくんの話が聞けて楽しいです。愛子さんの話は昔の話ばかりなんですね」
無邪気なこの一言が、痛烈な一撃を喰らわす。
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