花に惑う獣【8】 side獣

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文香を入院させ通信機器も財布も取り上げて軟禁する。 顔見知りの院長にたっぷり謝礼を支払い、見張りと警備を厳重にするように頼んだ。 僕が顔を出すたびに物言いたげな表情をして、外の様子を伺ってきた。 頼るのものが僕しかない彼女の状況に、ゾクゾクとするほどの愉悦を感じる。 「ゆーくん、ママはどうしてるの?大丈夫なの」 あんな母親のことまで気遣う、心優しい文香。 「野宮がついているから心配ないよ。父さんの事務所も僕の職場も通常通りだから大丈夫」 自分のことより周囲のことに心を配る。 「若菜ちゃんと連絡取りたい。きっと心配してるもーーっ」 健気な文香が可愛らしくて、思わず柔らかなくちびるをキスで塞いだ。
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