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野宮には悪いが由香の記事のお陰で、文香への同情が集まっている。
これを利用しない手はないので、もちろん次の手は打ってある。
「先にこっちを終息させてもらうよ。悪いね」
軽くグラスを掲げて言うと、以外にも面白そうに眼を細めた。
「いや、"お互い様"だ。大切なものを守る為に手段を選ばないのはな」
野宮のその言葉が引っ掛かるが、その日はそれで席を立つことにした。
帰り際、野宮が問いかけてくる。
「由香を凌辱した男が現在どうしているか、知っているか」
「……数年前に亡くなったと聞いている」
議員秘書をしていたその男は、選挙の応援スタッフだった由香を凌辱した。
選挙中でもあり議員の逆鱗に触れ解雇されたと、資料にはあった。
けれどその答えを聞いた野宮が、意味深にフッと笑った。
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