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親どころか何人の人間の血で染まったか分からない両手。
切り傷や火傷の跡の残った、醜い身体。
「お前が穢れていると言うのなら、俺はもっと薄汚く穢れている」
「一真(かずま)さん……」
“そんなことない”なんて安易な言葉は、由香も吐かなかった。
「ボロボロね、アタシたち」
首に腕を回して甘えてくる由香を抱きしめ、彼女が眠りにつくまでずっと髪を撫でてやった。
女に過去を話したのは初めてのことだった。
やられたらやり返す。それで相手が死んでも何とも思わない。
人としてどこか欠けている俺たちは、欠けたままの形で寄り添った。
欠けた欠片なんて探さない。
欠けたままで、いびつな形のままでいい。
それが俺たちには相応しいと、思った。
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