雪柳の咲く頃

5/9
前へ
/11ページ
次へ
 誕生日当日。  待ち合わせは、礼緒菜のマンション前に19時。  服装の心配は、していない。仕事柄カジュアルなのはお互い避ける所為(せい)だ。  礼緒菜の事務所が近い……と言っても、片道5キロ……なので、彼女を少し待たせた。  車の窓を開けて礼緒菜を見る。  『出掛ける』、と伝えてあるせいか、小さなバッグを持っている 「お待たせ」 「大丈夫だよ」  言いながら、ちょこちょこと近付いて来た礼緒菜に、車に乗るように言う。 「はーい、どこ行くの?」  予約したレストランの名前を言うと、意外や意外、行くのを否定された。  逆に提案されたのが、事務所近くのファミリー・レストラン。  ――うそだろぉ!?  こちらが文句を言うと、礼緒菜がプックリと頬を膨らませるので、何も言わないけど。  ――自分の誕生日って、分かってんのか?  忘れてる可能性が、あることは……  ……………………  否定できねぇー!
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加