雪柳の咲く頃

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「うわあっ! わんちゃんだー♪」  不意に子供の嬉しそうな声がした。  店内が、ざわり、とした。  ……ペットか? にしては、おとなしい。 「これっ」  低いたしなめるような女性の声。母親だろうか。  店内を男性店員が、出入口に向かう姿が見えた。  ドリンクバーを利用するついでに、さりげなく出入口を覗く。  ちょっとダンディーな男性が黒い犬を連れていた。  黒い犬は、白いハーネスとハンドルを着けている。  ハーネスは、胴輪。ハンドルはコの字型をしている盲導犬(もうどうけん)特有のものだ。  ……大丈夫だろ。  それだけを確認すると、俺は席に戻った。 「なんだったの?」  ワクワクした礼緒菜の声。 「盲導犬」 「そうなんだぁ」 「うん」  盲導犬などの補助犬(ほじょけん)の使用者は、使用者証(認定証)などの必要な書類を持っている事と、『書類を見せろ』と言う請求者にそれらを見せる事を義務付けている。  その上で、入店拒否は、法律で出来ないよう定められている。  ……以前、一度だけ、こういったトラブルがあったので、調べただけなんだけどね。 。
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