第1章

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何気ない日常の中で時にコーヒーを飲み、チェスを打ち笑い合い、風邪を引けば看病する為に奮闘し。 一月の間に二人の心の距離は確実に縮まっていた。 そして春が終わる頃。 桜が散るまでは、という言葉の通り、少しずつ、しかし確実に別れの時は来た。 スミは桜の木の意思であり、トウキがまだ幼い頃に仲良くしていた祖父、ウスズミとの約束の下に現れた、正確には『幽霊にも良く似た者』であった。 別れの時を理解し、それを拒み深夜に一人泣き崩れるスミを見つけたトウキは屋敷にあげ、寂しく温かな、最後のティータイムが始まる。 また共にコーヒーを飲もう、チェスを、読書を、料理をしよう。 そんな約束を交わし、何年、何十年先でもまた共に会おう、という約束を交わす。 そして、最後に二人はお互いの想いを伝え、スミはその姿を消してしまった。
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