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信号で止まると、昴が圭太の頬へと手を伸ばす。
「俺に口説かれてみるか?」
甘やかな声に、醸し出す雰囲気に、一瞬呑まれる。息を詰め、見つめる圭太の顎を掴み上向かせた。
「・・・忘れさせてやるよ」
クラリと目眩を感じて圭太は視線を彷徨わせた。色気に当てられ、心臓があり得ない程、鼓動を打ち鳴らす。甘く痺れる毒が、血液と一緒に体中を巡り圭太を侵していった。
「圭太」
掠れた声に背筋が震えた。吐息が唇に触れる。キスされる。ーーそう思った瞬間、圭太の脳裏に修也の顔が浮かび上がった。咄嗟に圭太の手が動き、昴を押し返した。後ろからクラクションが鳴らされた。
「残念、時間切れだ」
昴は何事もなかったかのように、ハンドルを握ると車を走らせた。その様子を横目で見ながら、圭太は詰めていた息を吐き出す。
「ドキドキしたか?」
「・・・揶揄うにしても限度があるだろ」
「本気ならいいのか?」
「俺は・・・例え浮気しても進藤とだけはしない。お前は修也のダチだからな。いくら俺が節操なしでも、やっていい事と悪い事くらいは分かる」
「気持ちがあってもか?」
その言葉に圭太は「ないだろ」と即答した。
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