嫉妬 ①

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「俺が入院した時は、進藤の金で個室に泊まらせてくれ」 「・・・それは構わんが、ただで泊まれるとは思っちゃいねぇよな」 「えっ?」 「タダより怖いもんはねぇってな・・・だろ?」 「・・・・・・俺には6人部屋で充分だ」 ボソリと悔しそうに呟く声に、昴が噴き出した。 「お前、本当にムカつく奴だよな」 「まぁ、そう怒るな。花束持って見舞いに行ってやるから」 「花束なんかより、食いもんの方がいい。特上肉にハムの詰め合わせが食いたい」 「入院中に持って行っても、お前の口に入る前に修也に食われるのがおちだな」 「・・・それはイヤだから退院祝いにしよう」 「はいはい」 軽口を叩き合いながら、病室の前に立った。プレートで名前を確認する。『青柳理久』確かにそう記されていた。 圭太は俄かに緊張を覚え、顔を強張らせた。 「・・・小原大丈夫か?顔色、悪いぞ」 「緊張で吐きそうだ」 「なにを緊張する必要がある?」 「・・・個室だぞ?二人きりだぞ?押し倒してやがったら、俺どうしたらいい?抱き合ってる場面とかみたら、俺吐くかもしれねぇ」 「泣くの間違いじゃねぇのか?」 「吐く」 言い切る圭太に昴が意味深に笑う。 「・・・そりゃ、それで面白いな」 圭太はキッと昴を睨み付けた。
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