嫉妬 ①

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「俺は真面目に話してんだ」 「俺も真面目に答えてんぞ」 嘘付け、嘘を。どう見ても面白がってるだろうが。てか、前に面白そうって言ってたよな。暫し睨み合った。その均衡を崩したのは昴だ。徐ろに手を伸ばし、扉をガラッと開いた。 「あっ、バカ止めろ」 思わず手で抑えようとしたが間に合わず、扉が軽やかに開くとクルリと回転させられた。 そうして、目に飛び込んで来た光景に固唾を飲んだ。 想像通り・・・そんな言葉が頭の中を駆け巡る。吐きはしなかったが、圭太は妙に冷めざめとした気持ちで、その様子を見た。 「小原、どうした」 渋い声が背後から聞こえた。 「ほう」 想像通りだな、ボソリと昴が呟いた。その声に小さくうるせぇよと返した。 「しゅう、や?苦しいよ」 修也に抱き締められている男が身動ぐと、修也はようやく我に返ったみたいに、慌てて男を離した。 「誰か来たの?」 そう言って、修也の体の端から覗き込むように顔を向けた男は、目がクリクリとして、小動物を思わせるような可愛い顔をしている。自分とは全く違うその容貌に、圭太はイラつく。その男はキョトンとした顔を、圭太とその背後に立つ昴へと向けた。 「進藤さん・・・と、どちら様ですか?」 「よう、久しぶりだな」 昴は圭太の背中を押して、中へ入るようにと促した。圭太はそんな昴をちらりと振り仰ぎ、病室の中へと足を踏み入れた。 「その綺麗な人は進藤さんの知り合いなの?」 「俺の付き合っている男だ」 「えっ?」 「なっ」 昴の爆弾発言に、圭太と修也は同時に声を上げた。2人に凝視されながらも、昴は楽しそうに圭太の肩を抱き「そうなんだ」と、疑いもせずニコニコと笑うリクを探るように見ていた。
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