嫉妬 ①

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病室を出て、昴を探した。辺りを見渡すと、廊下の陰に男が二人居る。圭太は近付くと「進藤」と声を掛けた。 問い質しても何も答えない修也の煮え切らない態度にムカついて、圭太は踵を返した。 エレベーターに乗り、病院を出る。ズンズンと歩く圭太の後ろを昴が無言で歩く。 何なんだ、何なんだ、何なんだ。ぐるぐると渦巻くのは、リクの言葉とはにかんだ顔。修也の焦った顔に彷徨う目。別れたんじゃなかったのかよ。俺と付き合ってたんじゃなかったのかよ。俺が好きだって言ったのは・・・嘘だったのか?そこに居ない修也に問いかける。 「小原」 グイと腕を掴まれ、圭太はたたらを踏んで立ち止まる。 「何だよ」 睨み付ければ「行き過ぎだ」そう言って斜め後方にある白いセダンを指差した。圭太はバツが悪そうに顔を背けた。 「・・・飲みに行くか」 「こんな時間からか?まだ、昼前だそ?」 「俺は気にしないぞ?むしろ、贅沢な時間に感謝したいくらいだ」 「どんだけ酒好きなんだよ」 圭太が呆れたように言えば「楽しみはそれくらいだからな」と嘯く。それでも躊躇すると「じゃあ、夜までデートでもして、その後飲みに行くか?」と色気溢れる目で圭太を見る。 「デート!俺と進藤が?」 「ああ、俺らは付き合ってんだ。デートくらいしてもおかしくはないだろ?」 圭太は胡乱な目で昴を見た。 「お前・・・いい加減にしろよな。勝手にあんなこと言ってんじゃないぞ?余計にややこしくなるだろうが」 「馬鹿な男に、危機感を持たしてやろうと思ってな」 「シャレになんないだろ」 圭太は愉しげに笑う昴に溜め息を吐いた。
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