嫉妬 ①

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圭太は昴の車に乗り込むと、スマホを取り出し電源を切った。 「あいつの声を聞きたくない」 そう言ってポケットの中に放り込む圭太を昴は横目で見た。 「そうか、俺は仕事の連絡が入るかもしれないから電源は切れないが、小原に付き合おう。奴の電話は無視することにする」 「これは俺と修也の問題だから、進藤が付き合う必要はないんだぞ?」 「いや、さっきので俺の問題にもなった。心底面倒くさい男になってるだろうからな。丁度いいさ」 頭を冷やさせた方がいいだろ?と笑う昴に溜め息を吐いた。 「・・・何を考えてんのか知らないけど、そういうのを、自業自得って言うんだと思うぞ?」 「小原が心配だって言ったろ?」 「引っ掻き回して楽しんでるだけだろ」 「・・・引っ掻き回されてるのか?」 意味深に視線を寄越す昴に、ドキリと心臓が鳴った。これ以上突っ込むなと、頭の片隅で警戒音が鳴る。揶揄って楽しんでるだけだ。他意はない。跳ねる胸に言い聞かせると、圭太は平然とした様子を装いながら「修也がな」と返した。 「修也がね」 クククと笑う昴に見透かされたような心境になり、結局乗せられて睨み付けた。 「おまっ・・・タチが悪いからな」 「嫉妬に顔を歪める小原も、不安に怯える小原も嗜虐心が刺激されてゾクゾクすんだ」 「勘弁しろよ」 ホント、タチ悪過ぎだろ。呟く圭太に昴が笑う。
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