嫉妬 ①

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「てか、修也を傷付けるようなことはしたくない」 「そうだな・・・俺もその意見には賛成だ」 胡乱な目で昴を見る。前を見ながら笑う昴の目が余りにも優しくて、圭太は拍子抜けした。言いたいことは色々あったのに、圭太にはどの言葉も口にすることが出来なかった。 「まぁ、あの馬鹿がお前に惚れきってるのは事実だ。だから、一晩くらいで許してやれよ?」 「また、面倒なことになるからか?」 照れ臭くて思わず悪態を吐く圭太を見透かしたように笑いながら「ああ、身の危険を感じるからな」さらりと怖いセリフを口にした。 「自業自得だ」 「嫉妬は恋愛に欠かせないだろ?」 意味深に視線を寄越す昴にムッとする。以前嫉妬したことがないと言った圭太を、揶揄っているのが分かったからだ。 「惚れて執着するから嫉妬する。独占欲に目が眩んでそいつしか見えなくなる。・・・楽しいだろ?」 「楽しくない」 「恋愛の醍醐味だぞ?楽しい、幸せだ。だけじゃつまらないじゃないか。その内飽きるぞ?」 「平和に過ごせるならそれでいいと思うけどな。お前も、どっか偏ってるよな」 「バカ言え、人の本質だぞ」 「何が本質だよ」 「毎日同じことの繰り返しは飽きねぇか?朝起きて会社行って仕事して、帰って寝るだけなんて、何が楽しい?毎日じゃなくてもいいから、そこにほんの少しの刺激が加わるだけで、世界は変わると思うぞ?」 だからこそ浮気ばっか繰り返したんじゃねぇの?昴に言われて圭太はハッとした。
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