嫉妬 ①

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浮気に意味はなかった。誘われるから誘いに乗った。可愛いと思ったから口説いてみた。その程度だ。帰って子供と遊んで嫁の相手をして、そんな生活に気詰まりを感じていたのは本当だ。毎日、つつがなく繰り返し行われる平凡な人生に、浸りたくなかったのかもしれない。 そんな風に思っても、安定した生活を、未来を捨てるような真似は、大体の奴らはしないだろう。なら俺も、偏った人間ってことになるのかな。圭太は、そんなことをつらつらと考える。 「まぁ、何事も限度があるけどな。生活全てを脅かすくらい周りが見えなくなるようなら、俺に言ってこい。ーーぶち壊してやるから」 えっと、顔を向ける圭太に「小原なら大丈夫だとは思うけどな」と笑う。 「・・・なんか怖いな、お前」 「そうか?」 揶揄う視線を向ける昴に眉根を寄せた。こいつ本当は修也に惚れてんじゃねぇの?思い起こすのはホテルでの昴の言葉だ。 『やれねぇな』そう言った時の目は真剣だった。あの後、話をした居酒屋で違うとは否定していたが・・・どうなんだ?もしかしたら、これも昴が言う恋愛の醍醐味ってヤツを味あわせているのか?圭太は修也に対し、妙な執着を示す昴の真意がどこにあるのか分からなくなって、思わず首を捻った。 そんな圭太の様子を、面白そうに昴が見ていることには、圭太は気付かないでいた。 嫉妬 ① ー終ー
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