嫉妬 ②

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圭太の脳裏に、先程の修也の言葉が思い浮かんだ。 『違う。そうじゃない。圭太は本気だ。本気でお前を口説いた。お前にずっと恋い焦がれていて、いい加減、我慢も限界に来て・・・お前がどうしても欲しくて、必死になって口説いたんだ』 縋るように圭太を見る修也の目に嘘はなかった。本気でムカついたが、本気で怒った訳ではない。言わば、怒ったのはポーズに過ぎない。 『つい』やら『魔が差した』で誰彼構わず口説かれたら堪ったもんじゃない。村瀬は大丈夫だったみたいだが、もし、本気にされて惚れられたらどうするつもりだと、釘を刺したと言うのが圭太の本心だった。 「で?どうすんだ?」 「・・・何がだ?」 訝しげに問う圭太に「どこに送ればいいんだ?」昴が半笑いの顔で訪ねた。 その笑みに気恥ずかしさを感じながらも「家でいい」と返す。 きっと修也も慌てて戻って来るだろう。と、圭太は踏んでいた。 「了解。頼むから仲直りしてくれよ?被害を被るのは俺だ」 俺は今回何もしてないからなと、眉尻を下げる昴に頷く。前回の電話攻撃が、かなり堪えたらしい。 今回は本当に昴は何もしていない。圭太が勝手に巻き込んだだけだ。 「巻き込んで悪いな」 殊勝に謝る圭太に、昴は何も言わず頭をポンと叩いた。
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