嫉妬 ②

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「・・・圭太」 「圭太じゃねぇよ。こんな時間までどこをほっつき歩いていた。何でとっとと帰って来ないんだ」 情けない顔をした男は、窺うように圭太を見ながら「探してたんだ」と呟いた。 「探してた?・・・誰をだよ」 「圭太に決まってんだろ!まさか帰ってるとは思わなくて、昴のとこ行ったり奏んとこ行ったり、繁華街ウロウロしたりしてた」 最初勢い込んでいた言葉は、最後の方になると小さく消えそうな声に変化した。 「俺、家に帰るって言ったよな」 「だから、本当に帰ってるなんて思わなかったんだ。お前、怒ってただろ?どっか遊びに行ったんじゃねぇかって思ったんだよ。昴に電話して圭太の居所を聞いても、のらりくらりと話を躱して電話切っちまうから、もしかして昴と一緒なんじゃないかとも疑った」 圭太は心の中で舌打ちする。あいつ何考えてんだ?何で素直に教えないんだよ。何で自分から巻き込まれに来るんだ?眉根を寄せる圭太に、修也は何を勘違いしたのか、早口で詫びの言葉を口にした。 「・・・圭太、悪かった。冗談でも何でもお前が居るのに、他の奴を口説くような真似をして、本当に悪かったと思っている。反省してんだ・・・許してくれないか?」 ショボくれた顔で、じっと見つめる修也を見て圭太は密かにミルクキャラメルの顔を思い出し、思わず頭をくしゃくしゃに撫で回したくなったのは、内緒だ。
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