419人が本棚に入れています
本棚に追加
「一カ月前に離婚したんだ」
その言葉に目を瞠る。
「バツが二個も着いちゃった」
ペロリと舌を出し、戯けた様子で呟く沙織に「また男作ったのか?」と悪態を吐く。
「遠慮を知りなさい。相変わらずキツイわよね。ていうか、貴方じゃないんだから早々浮気なんてしないわよ」
倍になって帰ってきた悪態に、圭太は苦虫を噛み潰したような顔をした。沙織はカップを手に取ると口に付ける。目線は圭太を捉えたままの沙織の、その探るような視線に居心地悪く身動ぎをする。
「・・・なんだよ」
耐え切れず顔を背けると、ぶっきらぼうに呟いた。
「風太は元気?」
「ああ、元気が有り余ってる程だ」
「今日、連れて来てくれるかと思ったんだけど」
「・・・保育園だし」
「休ませればいいじゃない・・・それとも自分を捨てた母親になんて逢いたくないって言われた?」
自嘲を浮かべる沙織に、圭太は慌てたように首を振った。
「違う。風太には伝えてない。だから、そんなことも言われてない。それに・・・悪かったのは俺だ」
散々浮気を繰り返した挙句、手を出してはいけない人間に手を出して会社をクビになった。愛想を尽かされるのは当然だ。
最初のコメントを投稿しよう!