第5章

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◆ 「で?お前の元嫁はなんだって?」 風太を寝かし付けた後、圭太は修也の部屋でビールを飲んでいた。修也は、おつまみをテーブルに乗せ、圭太の隣へと腰を下ろした。 「仕事の合間に出て来たらしくて時間がないからまた今度って帰って行った」 沙織に会うにあたって、修也には話をしていた。前回、元彼と隠れて会われたことに酷くムカついたし、隠し事はなしにしようと約束したこともあって、隠さずに話した。 「じゃあ、風太の近況訊いて、終わりか」 「いや・・・」 圭太は小さく否定した。 「何だ?」 修也が肩を引き寄せ抱き締めてくる。圭太は促されるまま体を預け、その胸元に頭を凭せ掛けた。 「・・・男と付き合ってるのかって言われた」 ボソリと呟く言葉に修也がピクリと反応する。 「・・・へぇ?それで圭太はなんて答えたんだ?」 「何も言えなかった。否定しなきゃって思ったけど、出来なかった」 「・・・何でだ?否定すりゃ良かったのに」 「出来る訳ないだろ?そしたら、俺の気持ちまで否定することにっ・・・」 なるだろ?言葉は最後まで口にすることが出来なかった。修也に唇を塞がれて、修也の中に吸い込まれて行ったから。 ちゅっと音を立てて修也は離れると、強く圭太を抱き締めた。 「気にするな。お前の気持ちはちゃんと知ってるから。お前はヘテロだ。ゲイでもないのに、周りから好奇な目で見られることはない」 まだまだ偏見はあるからなと、優しく諭すように囁く修也に、圭太は唇を噛み締めた。
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