第5章

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修也の言葉には悪意はない。むしろその逆で、圭太を心配して言ってくれているのだろう。確かに俺はゲイじゃない。修也以外の男と、どうこうなりたい訳ではないからバイでもないだろう。だからって、その言い方はないんじゃないかと、圭太は思う。 何だか一線を引かれたような、突き放されたような気がして寂しさと、一抹の不安が胸を過ぎった。 「圭太?」 何も言わない圭太を修也が覗き込む。圭太は被りを振って手を伸ばし修也に抱き着いた。 「・・・圭太?」 訝しげな声を塞ぐように唇を押し付ける。 「また、仕事を抜けさせて貰うことになると思う。出来るだけ休みの日にするようには言っておくが」 「それだと、風太を連れて行くことになっちまうぞ?何の話か分からないが、いずれ会わせるにしても終わってからの方がいいんじゃねぇか?仕事のことは気にするな。気楽な自営業だ。何とでもなるさ」 「そうだな・・・悪い、面倒かける」 「だから、気にするなって」 なっと、笑顔を見せる修也に頷いてみせた。気を遣わせていると分かるのに、修也の言葉の一つ一つに圭太は酷く敏感に反応してしまう。俺は要らないってことか?役に立たないもんな。ーー深読みしてしまうのは、やっぱりさっきの修也の言葉に引っかかりを覚えてしまったせいだろうか。 圭太は目を閉じて密かに溜め息を吐き出した。
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