第5章

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『もしもし?兄貴?』 次の日の夜、今度は妹の智花から電話が入った。修也は近所の集まりに呼び出され、出掛けていた。多分今頃は宴会になっているだろう。 『久しぶり。元気だった?』 圭太は眉根を寄せてスマホを睨み付けた。両親や妹と最後に会ったのは、正式に離婚が決まりそのことを実家に報告に行った時だ。予め、沙織から話を訊いていたのか、両親や妹の視線がキツかったのを覚えている。特に妹の智花は沙織を本当の姉のように慕っていたせいか、圭太に対し嫌悪感も露わに詰っていた。 『今回が初めてじゃないんでしょ?昔から女にダラシないって知ってたけど、それでも結婚して子供も出来たのだから、少しは落ち着いたのかと思えば何にも変わってないんだ』 心底呆れた顔をする。 『女を、義姉さんを何だと思っているの?我が兄貴ながら情けなさ過ぎて腹が立って仕方がないわよ。ちょっと、見てくれがいいからって、女をバカにしてるとしか思えない。男としても、旦那としても最低最悪だわ』 『兄貴の顔なんてもう2度と見たくない!』 父親や母親にも責め立てられ、圭太は寝ている風太を連れて実家を後にした。風太を預かって貰おうと思っていた。だが、圭太はその考えを捨てた。 悪いのは自分だ。そんなことは誰に言われなくとも分かっていた。図星を指され、腹が立って意固地になった。今考えてもガキだと思う。風太のことを思うのなら、あの場面ではどんなに腹が立とうと我慢するべきだった。それなのに、圭太の口からは売り言葉に買い言葉・・・2度と敷居はまたがない。そう言い捨てていた。 直ぐに後悔したが、言い切った以上、泣き付くことも出来ず、途方に暮れていた所を修也に拾われた。
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