第5章

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先日は沙織から電話があった。そして今日は智花からの電話だ。勘繰るなって方が難しいだろう。 「・・・何企んでんだ?」 圭太の声音が低くなる。 『やだ、企むとか人聞きの悪い』 圭太の問い掛けを、智花が笑い飛ばした。 『さっきも言ったでしょ?風太に会いたいって。父さん達にしたって、唯一の孫になるんだもの。そりゃ会いたいと思ってもおかしくないでしょ?』 私もまだ独り身だしさぁと、智花がまた笑う。確かに、離婚する前は頻繁に家に来ては風太にかまけていたらしいが。 『それに、口には出さないけど兄貴にも会いたがってんだよ?喧嘩別れみたくなっちゃって、兄貴もうちらもお互い意地張っちゃって今まで来ちゃったけどさ、時間も経って頭も冷えたでしょ?そろそろ歩み寄りが必要なんじゃないかなぁ』 しみじみとした口調で諭す智花に、圭太はそうだなと呟いた。 『私もさ、悪かったって思ってんだ。いくら本当のこととは言え、感情的になって詰っちゃったでしょ?これでも随分と反省したんだよ?』 智花は殊勝な言葉の端々に、棘のある言葉を混ぜ込む。諭すように言ってた時は、こいつも大人になったなと思っていたが、早々変わらないものなんだなと、圭太は苦笑した。
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