第5章

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「分かった。今週は無理だが、時間を調整して必ず行くから」 『約束よ?絶対だからね?』 智花に念押しされて、ああと頷いた。 『来る前には連絡してね。出来るだけ早い目に来てね?』 「分かった」 『うん、良かったよ。父さん達も喜ぶ。ありがとうね』 その言葉を聞いて、もしかしたらこいつはずっと気にしていたのかもしれないと思った。自分の言った『2度と会いたくない』という言葉を。 だとしたら、悪いことをしたと思った。確かにあの言葉がキッカケになって、言い争いにはなった。でも、怒りはとうに冷めていたのだ。 実家から遠のいていたのは、バツが悪かったのと、意固地になっていただけだ。 「日が決まったら連絡する」 『うん、待ってるね』 智花との電話を切りながら圭太は、俺も大概大人気なかったよなと、過去を振り返り一人反省した。 週明け、沙織から連絡が入った。 『明日の夜「無理だからな」 また唐突に約束を取り付けようとする沙織を遮った。 「何で次の日なんだ。俺はこう見えて忙しいんだ。もっと早くに言ってこいよ」 『だって』 「だって?」 『前もって言ったら・・・』 口籠る沙織を促す。 「言ったら何だよ」 『理由付けて断られるかもしれないじゃない』 「・・・・」 『ちょっと強引にでも約束取り付けなきゃ、会ってなんてくれないでしょ?・・・圭太、そういうとこあるじゃない。興味なくした相手に対して、怖いくらい冷たいとこあるじゃない』 何かを恐れるように早口に喋る沙織に、過去の遍歴を知られている圭太は、あーと呻いた。
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