第5章

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次の日、圭太は保育園に向かう道すがら、風太に沙織の話を切り出した。 「風太、母ちゃん覚えてるか?」 風太は瞬きを繰り返し、圭太を見上げる。 「・・・かあちゃん?」 「ああ」 圭太が頷くと、風太は手をぎゅっと握りしめ俯いた。その様子に首を傾げ、立ち止まる。 「・・・風太?」 「・・・しらない」 「覚えてないか」 小さかったもんなと呟けば「なんで?」と返って来た。 「父ちゃん、けっこんするの?ままハハ出来るの?」 「えっ?」 「おれ、ままハハにイジメられるのか?」 「・・・イジメられるの前提かよ」 「だって、テレビでやってたぞ?」 圭太は風太を抱き上げた。 「テレビ?」 「うん、女の子がままハハにイジメられるんだ。しゅうやがいんしつだなって言ってた」 「いつ、そんなドラマ観たんだ?父ちゃん知らないぞ?」 「父ちゃん、そういうの嫌いだからって、しゅうやがビデオ借りて来て、二人で観てたんだ」 あいつ保育園児になんのドラマを観せてんだよ。圭太は顔をピクリと引き攣らせた。 「ドロドロのグチャグチャだって」 「・・・そ、そうか」 「父ちゃん、けっこんするのか?おれ、ままハハいらない」 「いや、しないし」 風太が即答する圭太の顔を探るように覗き込んだ。
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