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「しゅう、や?」
呆けた様子の圭太に、修也が眉根を寄せた。
「お前、大丈夫か?」
問われる意味が分からなくて「えっ?」と問い返した。
「今、仕事中だぞ?」
確認するかのように言われて、圭太は目の前に座る依頼主に目を遣った。戸惑う視線とかち合い、あっと声を上げた。
ヤバい、仕事中に呆けた。
「すみません」
依頼主に頭を下げて修也に大丈夫だと頷いてみせた。修也は物言いたげな顔をしたが、圭太から視線を外し依頼主に目を向けた。
「中断してしまい、申し訳ありませんでした。隣に居るのは助手の小原と言います」
修也の紹介に頭を下げた。
「小原圭太です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「早速ですが、今書いて頂いた依頼内容を確認させて頂きます」
修也はそう言って、ファイルに目を落とした。
「桑田由紀子さん、ご依頼は旦那さんの浮気調査でよろしいですか?」
「はい」
「旦那さんの名前は桑田数馬さん。製薬会社にお勤めなんですね・・・営業を?」
「いえ、事務職を」
「不定期に帰りが深夜になるとありますが、仕事やその延長線上の付き合いの類いではなくて、浮気だと?」
修也の問いに、由紀子は「はい」と力強く頷いた。疑惑はほぼ確信に近いのだろう。彼女の様子を観察していた圭太は、そんな風に感じていた。
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