第5章

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「・・・確かに、何度かそういったことはありました。でも、それだって年に二、三回で・・・それが去年の年末辺りから頻繁に飲みに行ってるんです。それに、仕事で遅くなるって帰って来る主人からは、お化粧の匂いまでしていて・・・時々、嗅いだことのない石鹸の匂いもしている。仕事なのに、どうしてお風呂に入るんですか?主人は事務の仕事をしてるんです。ずっと椅子に座って仕事をする人間に、シャワーやお風呂は必要ないですよね?」 話している内に興奮してきたのか、由紀子はソファから立ち上がり、捲し立てた。キツく眦を上げて、掴みかからんばかりに激昂する由紀子を、修也は冷静な目で見つめ「落ち着いて下さい」そう声を掛けた。 その穏やかな声音に、由紀子はハッとしたように我に返ると、小さな声ですみませんと謝りながら、ソファへと座り直した。 「奥さんの言葉を疑っている訳ではありません。事実を確認しているだけですから、お気に障ったのなら謝ります」 修也が真摯な声で頭を下げれば、由紀子が慌てたように私の方こそごめんなさいと返した。
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