第5章

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「ご主人が遅くなる曜日は決まっていないんですね?」 「はい」 「では、逆に遅くならない曜日はありませんか?土日はいらっしゃるにしても、他の曜日は?」 修也の質問に、由紀子は首を傾げた。暫く視線を彷徨わせ、緩く首を振った。 「分かりません。本当に決まってなくて・・・突然のこともあれば、前もって言われる時もあるんです。大抵は仕事を理由に遅くなるって・・・時々飲んで帰る時もあるんですが、そんな時は同僚に終わった後、無理矢理付き合わされたって言ってます」 「その言葉を信じていないんですね?」 修也の言葉に頷く。 「主人は・・・生真面目で融通が効かないところはあるけど、優しい人なんです。どんなに遅く帰って来ても、作っておいた食事は必ず食べてくれるんです。・・・浮気をしてるって、本当は信じたくないし、有耶無耶なまま放っておこうかとも思いました。でも、こんな風に勘繰ってもやもやしたままなのは、もっとイヤなんです」 「本当に浮気していると分かったら、どうされるつもりですか?」 修也の問いに、由紀子が自虐的に嗤う。 「・・・分かりません。でも・・・そうですね。私達には、小学生になる子供が居ます。あの子の為にも別れるつもりはありません。だから、相手の方に手を引いて貰えるよう話し合い、ですかね」 強かな女性の顔をして由紀子がそう言った。圭太はゾクリと背筋を震わせ、ともすれば引き攣りそうになる顔を必死で宥めながら彼女を見ていた。
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