第5章

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由紀子は、よろしくお願いしますと、頭を下げ帰って行った。圭太は「お任せ下さい」と請け負い、笑顔で見送った。 「女って怖えな」 「女限定じゃないだろ。誰だって自分が大切にしているもんを脅かされたら、怖くもなるだろ。守りたいと思えば思うほどな」 「彼女が守りたいのは何だ?」 「安定した生活と子供だろうな」 「旦那は?」 「・・・さあな」 意味深な笑みで誤魔化す修也から目を逸らし、スナップ写真を手に取った。カメラ慣れしていないのか、目線を微妙に逸らした顔は、緊張して強張っている。写真からも生真面目な様子が見て取れた。 「暫く夜は張り付くことになる。飯は芳樹に頼んでおくから、食べに行け」 「いや、俺作るからいいよ」 たまには手料理を食わしてやらなきゃなと思い、圭太は首を振った。修也は眉根を寄せ、探るように圭太を見る。 「なんだよ」 「・・・・・・本気か?」 「本気だ」 「・・・作れるのか?」 疑わしそうな視線を睨み返した。 「言っとくが、嫁が出て行ってからここに越して来るまで、ずっと料理してたんだからな。まあ・・・上手とは言えないけどな」 語尾が小さくなるのは、料理上手な男を前に恥ずかしくなったからだ。 「料理してるとこ見たことねぇから、出来ないのかと思った」 「レパートリーは少ないぞ?レンジでチンか焼くくらいしか出来ないしな」 レンジでチンが料理に入るかは知らないが。 「ふうん?」 見つめられ、居た堪れずに身動ぎした。
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