第5章

24/178
前へ
/599ページ
次へ
「・・・何だよ」 「今度、俺にも作ってくれよ」 「え?」 目を見開く圭太に、色気溢れる目を向ける。ドキリと胸が音を立てた。 「お前の手料理を食ってみたい」 舌舐めずりでもしそうな顔に、圭太は一瞬見惚れた。修也からダダ漏れになるフェロモンにあてられ、クラクラと目眩を起こしそうになる。 なんで、手料理を食べたいって言葉にそんな色気漂わせてんだ。真っ赤な顔で睨み付けると、修也が目を細め圭太を見据える。 「あんま煽んな」 「なっ」 意味が分からず瞬きをすれば、修也が立ち上がり圭太を囲うようにソファに手をついた。 「抑えが効かなくなんだろ?」 するりと頬を撫でられる。 「煽ってない」 「無自覚か?一番タチが悪いな」 「知らねぇよ」 手を振り払うようにブンブンと首を振る。 「独り寝は寂しいだろうが、浮気はすんなよ?」 「・・・・」 「帰って来たら、存分に可愛がってやっから、それまでは我慢してろ」 圭太は黙ったまま、修也を下から見上げた。浮気するつもりがあるから黙っている訳じゃない。言わせて貰えば、修也と付き合うようになってから、一度だって浮気などしていなかった。女相手に勃つ気がしないし、男は修也以外は論外だ。だからじゃないが、目移りもしないのだから、圭太的には凄いことだ。修也に言えば喜ぶだろうなとは思ったが、四六時中一緒に居るのだから、わざわざ言わなくても分かるだろう。圭太は胸の内で、そう結論付けた。 「・・・返事は」 修也の焦れた声に我に返る。射竦めるような眼差しに睨み付けられ、圭太は息を詰まらせた。 「答えねぇと、今直ぐ突っ込むぞ?」 剣呑な雰囲気を漂わせる修也に、圭太は焦ったように何度も頷いていた。 修也に対する色んな想いや感情を『言わなくても分かるだろう』と伝える努力をしなかった自分を悔やむのは、まだもう少し先の話だ。
/599ページ

最初のコメントを投稿しよう!

419人が本棚に入れています
本棚に追加