第5章

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「ダメなのか?」 「ダメとは言わないが、良いとも言えないな」 風太が「なんで」と詰め寄る。 「幸也さんの友達が遊びに来てるんだろ?迷惑になるんじゃないか?」 「なんで!だって、奏が来てって言ったんだぞ?」 「だな」 「だったら、大丈夫だろ?」 「幸也さんは何て言うかな」 「・・・だいじょーって言う」 「大人には大人の事情があるから、どうだろうな」 圭太の呟きに、子供にも色々あるんだと、風太が呟き返した。 「じゃあ、電話してきいてみたらいい」 風太は圭太のスマホを手に取り差し出した。圭太はチラリと時計に目を遣り、時間を確認した。時計の針は10の文字を指している。遅すぎるとも言えないが、よそ様の家に電話をするのは微妙な時間と言えた。てか、もうこんな時間じゃないかと、圭太は風太に向き直った。 「・・・風太10時回ってる。寝る時間過ぎてるぞ?」 「むり。父ちゃんが、いいって言ってくれなきゃ眠れない」 「そんなことはないから心配するな」 「気になって気になってむりだもん」 拗ねた顔をしながら、圭太にスマホを押し付けてくる。 「こんな時間だし、明日訊いてみるから」 「じゃあ、おれも眠れない」 じゃあって何だ。じゃあって。じとりと睨み付けると、んっと更に押し付けられる。暫しスマホを間に挟み、睨み合いを続けた。 ーー折れたのは圭太だ。溜め息を吐き出し受け取った。俺も大概甘いよなと、苦笑を浮かべて。
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