第5章

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『揶揄ってはいないけど、怖い番犬に噛み付かれそうだから、そろそろ止めておくかな』 クスクスと笑いを零す幸也に「番犬て」と呟いた。修也のことを揶揄されているのが分かったが、何故だか居た堪れない。 『それより、どうしたんだい?』 圭太の心境を知ってか知らずか、幸也が話題を変えてくれたことに、圭太はホッとしながらも事情を説明した。 傍らでは風太が、期待に目を輝かせて圭太を凝視していた。 『・・・そう』 幸也は話を聞き終わると、そう呟き黙り込んだ。何事か思案している様子に、圭太は慌てて付け加える。 「こちらが無理を言っているのですからダメならダメと断って下さって大丈夫ですから」 困らせるつもりはないのだからと伝えると、そうじゃないんだと返って来た。 『・・・まぁ、私が何をしているか知ってはいると思うんだけど・・・』 言葉を濁す幸也に、家業のことだなと察して「はい」と頷いた。 『うん、それでね、訪ねて来る客もそうでね。しかも私より力のある人だから、結構物々しくなると思うんだよ。・・・風太が来るときは、出来るだけ裏の部分は見せないようにと心がけては来たんだが、今度ばかりは難しいと思ってね』 決して風太に来るなと言ってる訳じゃないんだよと、幸也が困ったように笑った。 「もちろん、分かってます」 幸也も如月も、風太を本当に可愛がってくれているし気を遣ってくれていることも知っている。
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