第5章

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眠い目を擦りながら風太が目を覚ます。 「幸也さんが、風太と話しをしたいって」 瞬きを繰り返し、圭太とスマホを交互に見ていた風太は「おっちゃん!」と一言叫び、スマホを手に取った。 「おっちゃん、風太だよ・・・うん、こんばんは」 風太はうんうんと頷きながら、幸也と話しを始める。時折真剣な顔をしてみたり、眉根を寄せたり、瞳を輝かせ笑ってみたり。様々な表情を浮かべる風太を、圭太は成長したよなと、妙に感慨に耽りながら眺めていた。 「うん、泊まりにいきたい。・・・うん、わかった。待って」 暫くすると、風太はそう言って「おっちゃん」とスマホを突き出した。 「もしもし、圭太です」 『圭太さん、週末、風太をお借り出来ますか?』 「俺は良いですけど・・・」 圭太が心配気に言葉を濁すと、幸也が慌てたように付け加えた。 『風太を怖がらせないように、極力最低人数で来て貰えるよう、話をしてみます』 「あ、いや、そうじゃなくて・・・大丈夫なんですか?」 幸也より力のある人だと言っていた。風太のワガママを押し通す形になってしまっているのではないかと、今更ながらに不安になったのだ。そんな圭太の心情を察したのか、幸也が言葉を続けた。 『ああ、それならきっと大丈夫ですよ。あちらも、小難しい話をしに来る訳ではないので。だから、子供が一人増えるくらい問題はありません。逆に遊び相手が増えて喜ばれるくらいです。奏も風太が居れば心強いだろうし、圭太さんさえ良ければ、風太が泊まる方向で話を進めたい』 圭太は風太を見た。 「父ちゃん、おれ、泊まりにいきたい」 圭太は、真剣に訴える風太の真っ直ぐな瞳を見つめ「分かった」と頷いた。 「ご面倒をお掛けしますが、よろしくお願いします」 圭太は電話の向こうに向かって頭を下げた。
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