第5章

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事務所に入ると、パソコンの画面を見ていた修也が顔を上げた。 「起きたのか、大丈夫か?まだ、寝ててもいいんだぞ?」 ほぼ睡眠は皆無と見られる男は、溌剌とした顔で圭太を気遣った。 「・・・お前は元気だな」 「おう、体力は有り余ってるからな」 その言葉に眉根を寄せる。何が違うんだ?修也よりは睡眠が取れている筈だ。なのに、比べるまでもなく、修也よりも疲れ切っていて、体が休養を訴えている。 圭太は修也の精悍な顔を凝視し、視線を、逞しい腕回り、がっしりとした肩、厚い胸板へと移し密かに溜め息を吐き出す。 まぁ、体格からして違うよな。それでも、同じ男として情けなくなるのは否めない。 「・・・圭太?」 訝る声に顔を上げると、修也が目の前に居た。その思わぬ近い距離に、目を瞠った。 「具合が悪いなら、寝てろ。今日は特に急ぎの仕事も入ってない」 「いや、大丈夫だ」 「顔色も悪い。無理させたからな、保育園の迎えの時間まで休んでろよ」 労わる言葉に首を振った。誰のせいだという言葉は飲み込み、代わりに「お前は元気だよな」と皮肉タップリに呟いた。
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