第5章

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土曜日までの数日間、圭太はイライラと鬱々の間を行ったり来たりしながら過ごしていた。 あの時、コーヒーと共に飲み込んだ言葉が、消化し切れず、ずっと燻り続けていたのだ。 気付けばじっと修也を見ている自分がいた。 こんな女々しいのは俺じゃない。あの時、飲み込んだのは俺だ。聞けないなら拘るな。と、何度言い聞かせてもダメだった。チラチラと窺うように見ていることに気付いているだろう修也は、完全無視を決め込んでいる。 しかも、あの日から修也は圭太を襲うことなく、大人しく部屋に帰っていることにも、修也からの無言のメッセージのような気がして落ち着かない。 だから余計に、浮気か?俺をこんなにして捨てる気か?と、妄想が暴走して、鬱々とした気分に囚われては、そんな筈はないと打ち消している。 こんな風に悩んだり落ち込んだりするのは、全部修也が悪いと、全部を修也のせいにして怒ってみたり、その一瞬後には落ち込んでみたりで、圭太の心の中は嵐が吹き荒れ、鬱憤が溜まりに溜まった状態になっていた。 散々浮気を繰り返し、相手の気持ちを蔑ろにしてきた罰かもしれないと、最後にはそんなことにまで気持ちが行き当たった。 どうすればいい?どうすればこんな気持ちから解放される?悩みに悩んだ圭太は、ふと、閃いた考えに囚われた。 ーーー尾行すりゃいい。 普段の圭太ならバカバカしいと一蹴していただろうが、自らの思考に翻弄され、心身共に疲れ果てた圭太には最早それしかないとまで思い込んだ。 圭太はほくそ笑みながら、実行に移すことにした。
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