第5章

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じゃあ、行ってきます。修也の車の後部座席で、そう言って手を振る風太を見送ったあと、圭太は自分の車に乗り込んだ。 言わず物がな。尾行する為だ。 後を付けることに、罪悪感が湧かない訳ではないが、あからさまに挙動不審な様を見せられ、話題を変えられれば、勘繰りたくもなるってもんだ。 散々葛藤と言い訳を繰り返しながらも、圭太はエンジンを掛け、ギアをチェンジした。 相手を確認するだけだ。話の内容まで聞こうとは思わない。 アクセルを踏み込んで、車を発進させた。 最初の行き先は分かっている。だから、慌てる必要はなかった。問題は、風太を下ろした後だ。 探偵を生業にしている男は尾行も得意だ。そんな男の尾行をしたところで、所詮は素人の自分だ。直ぐにバレて、撒かれるかもしれない。その後、何故尾行したのか問い詰められるだろう。 修也の怒った顔や、呆れた顔、責めるような顔が思い浮かんで怯みそうになっが、それでも、一人アレコレと考えて、悶々としているのはイヤだった。 これしか方法はないんだと、改めて自分に言い聞かせた。
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