第5章

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夜7時。駅の裏手にある居酒屋に圭太は入って行った。予約した名前を告げると、個室へと案内される。5分程過ぎた頃、ごめんと謝りながら沙織が部屋へと入って来た。 昼間着ていたスーツは脱ぎ去り、体の線を強調したようなタイトなワンピースを身に纏っていた。スタイルに自信があるから、出来る服装だろう。 あの後、圭太は部屋に戻り、洗い物を片付けてから事務所を開けた。修也からは一本の電話やメールさえも入ってない。こちらから連絡を取っても折り返しすらなかった。色々話がしたかった圭太は、事務所で帰らぬ男を待ち続け、約束の時間が迫っているのに気付き、慌てて待ち合わせ場所にやって来た。 避けられる理由が分からず、圭太は途方に暮れていた。 沙織は圭太の向かいに座る。圭太がメニューを差し出すと、ページを開き生ビールとつまみを数点注文した。届いたビールで乾杯すると、沙織はグイグイと半分程勢い良く飲み「美味い」と目を輝かせる。 「お前、そんなにビール好きだったか?」 目を瞬かせながら圭太が問うた。甘めの酎ハイを飲んでる姿しか思い浮かばない。疑問をぶつける圭太に、沙織は悪戯が見つかった子供のような笑顔を向けながら頷いた。
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